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【イベントレポート】仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアム 令和7年度北東北勉強会
投稿日:2026年01月26日
目次
1. イベント概要
2. 開会挨拶
3. パネルディスカッション
4. ワークショップ
5. 懇親会
1.イベント概要
日時:令和7年11月25日(火)15時30分~19時
会場:ヘラルボニー Cafe & Dining & Bar「無題」(岩手県盛岡市菜園1-10-1 パルクアベニュー・カワトク 1F)
本勉強会は、「仙台・東北スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」の目標である「広域ネットワーク型でのエコシステムの構築」を具現化する第一歩として、本コンソーシアム会員が一堂に会し、相互理解と連携強化を目的として開催された。北東北各県よりスタートアップが登壇し、各エリアのスタートアップ・エコシステムにおける共通課題の特定と、それに対する具体的なアクションの検討が行われ、特にワークショップを通じて、参加者間での活発な意見交換が行われ、次年度以降の各県での活動推進に向けた課題やアクションの明確化、エリア全体の目線合わせが行われた。


2.開会挨拶要旨
仙台・東北スタートアップ・エコシステムコンソーシアム事務局である、仙台市スタートアップ支援課より、本勉強会の開会挨拶が行われた。本コンソーシアムは、内閣府より「グローバル拠点都市」に選定されたことを受け、活動対象を従来の仙台中心から東北六県全体に拡大。「仙台・東北からチャレンジする人たちを応援する」という目的のもと、新体制へ移行した。今回の「北東北勉強会」は、コンソーシアム会員間の顔の見える関係づくりや連携の促進を目的として盛岡にて開催されたものであり、今後、東北エリアでの連携強化に向けて、年に数回程度の交流会や勉強会、意見交換の機会を設けていく方針が示された。登壇されるスタートアップや参加者同士の意見交換、グループワークなどを通じて、スタートアップ支援の課題の共有、ニーズに応じた施策立案など具体的な活動につなげていくことを目指す。また、仙台市が今年度特に注力する「グローバル展開」についても言及。各自治体が個別に動くのではなく、「東北として世界に打って出る」という目標に向けて連携を深めていきたいと強調された。台湾訪問など、具体的な海外挑戦の取り組みを紹介し、参加者との活動の相乗効果を高めるための協力を呼びかけ、開会の挨拶とした。
3.パネルディスカッション
パネリスト:
水口清人氏(タグボート株式会社/CRAZY CIDER 代表取締役)
石井聖名氏(磐井AI株式会社 取締役COO)
小原祥嵩氏(株式会社このほし 代表取締役)
モデレーター:
福留秀基氏(spurcle株式会社 代表取締役)
<北東北で事業を展開する理由>
・水口氏(青森県)
地元への貢献と地域資源の活用
元々温泉事業を行っていたが、コロナ禍を経て青森県産のりんごを使ったプロダクト事業(シードル、アップルブランデー)に転換。日本の生産量の6割を占める青森県産りんごという素材を使い、青森県に拠点を置いて世界を見据えた事業を展開したい、「地元が元気にならなかったら未来がない」という思いから、地元(青森県)にこだわり、首都圏へ行ってしまった若者の受け皿となる会社作りを目指している。

・石井氏(岩手県)
高専発スタートアップからテクノロジーによる地方活性化 自身が一関市出身であり、一関高等専門学校で研究していた「歩き方から認知症を推定する」技術を基に事業を始める。地方にテクノロジー企業を分散させ、地方を活性化していくべきだという考えに至った。将来的には、地元(一関市)を拠点に、自分たちの力で雇用を生み出し、首都圏へ出た若者が「戻ってきたい」と思えるような会社にしたいという想いがある。

・小原氏(秋田県)
移住先での偶発的な縁と資源の発見
兵庫県出身の小原氏は、以前はベトナムに住んでおり、「ベトナムとは別の、自然豊かな二拠点生活の場所が欲しい」という想いで秋田県に移住した。コロナ禍により、従来取り組んでいた海外事業ができなくなった際、移住先である秋田県で「何か新しいことができないか」と考え、身の回りにある未利用の森林資源(里山)に着想を得て事業をスタートした。先に移住していた仲間がいたこと、地域に根を張ることで行政や地域住民のサポートを得られたことが、秋田県に留まり事業を展開している理由である。

<北東北スタートアップの期待とチャンス>
北東北エリアで事業を行う起業家が感じている期待・チャンスは、「地域資源・ブランドの力」と「未開拓市場における応援の集中」の2点に集約された。
〇地域資源とブランド力
・強力な地域資源の活用:青森のりんごや白神山地の天然水など、地域特有の高品質な素材が商品への期待感を高め、ブランドの差別化につながる 。
・既存市場の活用:青森りんごは台湾や香港などで既に認知度が高く、既存の流通ルートや行政の努力の恩恵を受け、海外展開の初速を出しやすい 。
・未開拓の魅力:「何もない」と言われる地方の自然や資源が、グローバルな視点では「新しいラグジュアリーなコンテンツ」として非常に魅力的に映る 。
〇応援とコミュニティの優位性
・応援の集中:スタートアップ的な動きが少ないエリアであるため、新しい挑戦への応援が集中しやすい(クラウドファンディングでの実績や「希望の星」としての期待) 。
・行政・コミュニティのサポート:地域に根ざし、事業へのコミットメントを示すことで、行政や地元金融機関からの強力な協力・支援を得やすい 。高専発の企業として、コミュニティ内での信頼度が高まり、協力体制を築きやすい 。
・ギャップによる注目:地方でディープテック(認知症アプリ)のような先端技術に取り組む意外性がフックとなり、全国から興味・注目を集めやすい 。
<北東北スタートアップの壁と障壁>
事業を成長させる上で直面している、北東北エリア特有の壁・障壁は、主に「人」と「情報」に関するものであった。
〇人材と組織の課題
・人材不足: 成長速度に対応できる、クリエイティブで高い熱量を持つ人材(特に営業や成長意欲の高いプロフェッショナル)が地元に少なく、確保が難しい 。
・賃金格差:優秀な人材を都会から呼び戻したり、定着させたりするための高い賃金を払える収益構造を確立する必要がある 。
・組織の成長痛:急成長に伴う組織のルールや仕組みの変化に、既存の社員がついていけないという成長痛が発生する。
・刺激、交流機会の不足:地方は外部からの新しい風や刺激が入りにくく、経営者や他の起業家との交流・学びの機会が少ない 。
〇資金調達と知見の課題
・エクイティ調達の知見不足:スタートアップ的なエクイティ(株式)調達に関する相談相手や知見の蓄積が地域に乏しく、適切なファイナンス戦略を立てることが難しい。
・情報量の格差:ビジネスプランや最新のマーケティング手法など、質の高い情報や知見は依然として都会に集中しており、積極的に首都圏などへ出向く努力が必要である 。
〇地域マインドセットの壁・ナラティブの障壁:地元の人々が抱く「この地域には何もない」というマインドセット(ナラティブ)が、新しいチャレンジに対する最大のバリアになっている 。


4.ワークショップ
テーマ:「パネルディスカッションで出た期待をどう実現し、課題をどう解決できるか」
ワークショップ【1】では、支援者と起業家が混在したグループ(5~6名)に分かれ、課題解決に向けた対話を実施した。各グループで「最も解決したい課題」を一つ選び、その解決策の方向性が発表された。ワークショップ【2】では、【1】で得られたフィードバックを元に、具体的なアクションプランを作成。短期的なKPI/KGI設定の検討も行われ、次年度の活動計画に直結する成果が得られた。
〇発表例
各発表者は、それぞれの立場から抽出した「期待」と「課題」、そしてその「理由」を明確にし、具体的な「解決策」や「希望」を提示した。
事例①
期待(理由):
秋田県に地域課題が豊富にあること → 日本のワーストと言われる課題が揃っており、これらはすべてビジネスチャンスに溢れているため。
課題:
スタートアップ型の起業課題への対応(資金管理・資金調達) → 成長フェーズに入ると、県内に資金調達先が少ないため、県外への流出を余儀なくされる。
解決策・希望:
・地元の金融機関のスタートアップリテラシー向上 ・ 学生向けの投資体験プログラムの実施(スタートアップを知るきっかけ作り)
・ 行政が全面的にバックアップできる体制の構築 ・ 課題を明確にし、外に提示することでビジネスチャンスがあることをアピール
事例②
期待(理由):
「地域のために」を考えるスタートアップ企業が多数存在していること → 都会型スタートアップと同じ支援をする必要はない
課題:
・スタートアップ企業のコミュニティの少なさ ・資金調達(創業融資、スタートアップへの資金支援) → 「スタートアップ5か年計画」が始まっているが実績が伸びていない現状を踏まえ、これまでと違った支援策の必要性
解決策・希望:
企業のニーズに応じた支援環境の整備や、ニーズに合った相談体制を整えること。
事例③
期待:
青森県内には資源が豊富にあり、海外展開の可能性がある。
Q&A(解決策の提案):
・伴走してくれるアドバイザーの存在(視野の拡大)
・行政が持つネットワークの活用 ・クリティカルに壁打ちしてくれる相手の必要性




5.懇親会
同会場にて懇親会が実施された。起業家と支援者がリラックスした雰囲気の中で交流し、ワークショップで深掘りできなかった具体的な課題や連携の可能性について、フランクな意見交換が行われた。これにより、今後の連携に不可欠な信頼関係とネットワークの強化が図られた。また、タグボート様のシードルも提供され、楽しみながら参加者間の相互理解を深める場となった。

