NEWS お知らせ

【イベントレポート】仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアム設立記念イベント

目次

1. イベント概要

2. 共同代表挨拶

3. 計画説明

4. 基調講演

5. パネルディスカッション

6. 閉会挨拶

1.イベント概要

日時:令和7年9月24日(水)14時~17時

会場:アーバンネット仙台中央ビル4階カンファレンスAB

本イベントは、仙台・東北地方のスタートアップ・エコシステムを強化・発展させることを目的とした「仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」の設立を記念して開催された。本コンソーシアムの共同代表である仙台市長、東北大学総長による挨拶、コンソーシアムの活動計画の説明、株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEO・松田文登氏による基調講演、そして東北を拠点とするスタートアップ起業家によるパネルディスカッションが行われた。

2.共同代表挨拶

仙台市長 郡和子:

令和7年6月、「グローバル拠点都市」に選定され、拠点都市の計画では「時価総額100億円以上のスタートアップを5年で10社」「海外企業等とのマッチング件数を5年で1,000件」等、スタートアップのさらなる成長とグローバル展開を意識した6つのKPIを設定したことを報告した。

また、社会課題解決を目指すインパクトスタートアップや、大学の技術シーズを活用したディープテックスタートアップへの支援を通じて、東北の発展に向けて取り組みを進める方針を示した。

国立大学法人東北大学 総長 冨永悌二氏:

冨永氏は仙台市長と共に共同代表を務め、国際的な競争力を持つエコシステムの構築を目指すと述べた。

企業との共同研究・社会実装からディープテック・スタートアップ設立 まで、地球規模の社会課題解決に繋がるイノベーションを多数創出するため、「ZERO INSTITUTE」」を 2025 年 7 月に設立し、9 月 1 日から本格的な活動を開始することを明らかにした。

3.計画説明

コンソーシアム事務局から、第2期拠点形成計画の概要と今後の方向性について説明があった。

1)第1期計画の成果と第2期計画の展望

令和2年からの5年間で推進された第1期拠点形成計画は、関係者の尽力によりKPIをおおむね達成した。東北の強みを活かしたスタートアップが集積し、海外へ事業展開する事例も多数生まれている。

今年度から5カ年で始動する第2期拠点形成計画では、「仙台スタートアップ戦略」をベースとし、以下の2つを主な支援対象として重点的に支援する方針が示された。

①インパクトスタートアップ:社会課題解決を目指す企業

②ディープテックスタートアップ:大学の技術シーズを活用した企業

これらの支援を通じて、課題解決先進地域の実現を目指す。新たなKPIとしては、スタートアップの更なる成長とグローバル展開を意識した6つの指標が設定された。

2)産学官金連携とグローバル化に向けた具体的施策

コンソーシアムとしては、東北各県の支援者との連携を一層強化し、産学官金が一体となってスタートアップの成長を後押しする。また、定期的な交流会や勉強会を開催し、支援者としての経験やノウハウを共有する場を設けることで、持続的にスタートアップを輩出するエコシステムの基盤を形成する。

4.基調講演

登壇者:株式会社ヘラルボニー 代表取締役Co-CEO 松田文登氏

「異彩を、放て。」をミッションに掲げるヘラルボニーの松田氏が、自身の兄が知的障害を伴う自閉症であった原体験から、障害に対する社会のイメージを変革するための事業について語った。

1)ビジネスモデル:

国内外の障害のあるアーティストと契約し、そのアートデータの著作権(IP)を管理。

そのIPをJALのビジネスクラスのアメニティ、阪急うめだ本店の全館プロデュース、クレジットカード、飲料水など、様々な企業とのコラボレーションを通じて社会に展開。ライセンスフィーの一部が作家に還元される仕組みを構築している。

2)実績と海外展開:

世界的な広告賞「カンヌライオンズ」でのゴールド受賞や、LVMHグループのイノベーションアワードに国内企業として初採択されるなど、世界的な評価を獲得。

フランス・パリに「HERALBONY EUROPE」を設立し、本格的な海外展開を進めている。

3)メッセージ:

障害を「欠落」ではなく「違い」と捉え、支援や貢献という文脈から脱却し、純粋なビジネスとして価値を創造することの重要性を強調した。

5.パネルディスカッション

1)開催概要

テーマ: 「起業家の顕在課題を解消するために、起業家が支援機関に求めること」

パネリスト:

アトラト株式会社 代表取締役 角谷倫之氏

AZUL Energy株式会社 代表取締役CEO 伊藤晃寿氏

株式会社エピグノ 取締役最高医療責任者(CMO) 志賀卓弥氏

モデレーター:

 スパークル株式会社 代表取締役 福留秀基氏

2)目的

ディープテック分野の起業家が現場で直面しているリアルな声を共有し、支援機関が陥りがちな「独りよがりの支援メニュー」や「自らのKPI達成のための支援」といった課題をなくしていくことを目指す。起業家の声をもとに具体的な行動に結びつけることが重要である。

3)パネルセッション

①プレシード・シード期「0→1の壁」 - アイデアを事業へ

最初の事業の核(=1)を創り上げる上で、何が必要だったか、また、どのような支援があればよかったかについて議論。

<最初の「1」を創り上げるために何が必要であったか?>

研究室に多くの学生がいたため、当初の人材には困らなかった。しかし、支援機関から紹介された人材に任せたプロジェクトは大きな失敗に終わり、「研究と社会実装は全く違う」ことを痛感。以降は自ら足を運んで仲間を集めることの重要性を学んだ。初期の支援者とは相性が良く、自分の心に響く支援だったからこそ、期待に応えようと努力し、事業をテンポよく進められた。

・元同僚など、身内でチームを固めた。前職での研究経験を活かし、大学の先生からの相談をきっかけに起業。当初から経営者を志していたわけではなかったが、自ら手を挙げた。半年間は自己資金で活動し、その後シード出資を受けた。「大学に依存するのではなく、自分たちから動き出すこと」が重要だと語った。

・ エンジニアは、友人に兼業で参加してもらうなどして仲間を集めた。大学発スタートアップ特有の「研究者は代表になれない」という文化の壁に直面し、経営者を探す必要があった。また、手術室向けのサービスという専門性の高さから、外部の人間には価値が伝わりにくく、自ら病院に足を運んで営業を行った。VCからの伴走型支援が、ビジネス面での大きな支えになったと振り返った。

最初の仲間集めや、研究者と経営者の文化的な壁、そして最も重要な資本政策について、初期段階で相談できる相手がいないという課題が挙げられた。

<はじめの一歩の支援について、何があったらよかったか?>

・事業化のタイミング:「会社を設立するのが早すぎたかもしれない」という意見があった。補助金などを活用して研究として進めるべき期間との見極めに関するアドバイスがあればよかった。

・正しい資本政策の知識:資金調達と株式に関する知識は、独学での習得が難しい。専門家が身近にいる等、気軽に学べる環境があれば、よりスムーズに事業を進められたのではないか。

・相談できる文化と関係性:「初期に株を8割も持っていかれた」という苦い経験談が共有された。当時は人に聞くという発想がなく、自分で全て決めてしまっていた。「もっと周りを頼ってもよい」という環境があればよかった。特に、自らの失敗談を反面教師として話してくれる人の存在は非常に貴重である。

②アーリー・ミドル期「1→10の壁」 - 成長の加速と障壁

事業を加速させる「追い風」と成長を阻む「逆風」をテーマに、シリーズA以降のボトルネックについて議論した。

<最大のボトルネックについて>

・技術を事業価値に翻訳できる人材の不足:ディープテック領域では、技術的背景を理解し、それを事業の言葉で語れる人材が不可欠。シリーズA以降にコンサル出身者などをチームに迎え入れたことで、この課題を乗り越えられた。

・研究開発環境(ラボ)の確保: 研究開発が主体のスタートアップにとって、実験環境は生命線。比較的早い段階で大学連携の施設を確保できたが、今後、新たに立ち上がるスタートアップにとってラボの確保は大きな課題になると懸念を示した。

・セールス人材の確保と営業力の強化: シリーズAまでは「夢」で資金を集められるが、シリーズB以降は「どれだけ稼げるか」という実力が問われる。特に大学発スタートアップは「モノを売る」ことが不得手な傾向にあり、営業・販売を強化するためのセールス人材の確保が必要。

<求められる「有効性のある支援」>

夢を語るフェーズから現実を語るフェーズへ移行する起業家に対し、支援側も意識を切り替える必要がある。

・「最初のユーザー」になってほしい:自治体や支援機関自身が、開発したプロダクトの最初のユーザーとなり、導入実績を作ってほしい。産業界による働きかけの強化が求められる。

・売上・利益に直結する支援:病院の紹介など、具体的な販路開拓に繋がり、売上や利益の創出に直接貢献する支援が極めて重要である。

・解像度の高い具体的な支援:「ふわっと何でも支援します」というスタンスではなく、各社の課題や状況を深く理解した上での、解像度の高い具体的な支援が求められている。

③エコシステムへの具体的なお願い

<今最も必要な支援は何か?>

・知財提供ルールの明確化:スタートアップへの知財提供が現状では個別相談ベースであり、時間と労力がかかる。標準的なフォーマットや明確な基準を設けることで、プロセスを迅速化してほしい。

・利益相反に関するルールの適正化: 共同研究契約におけるロイヤリティ(%)など、大学内のルールが実態に即していない場合がある。大学の中でも利益相関があることを踏まえ、解像度をあげて双方が納得できる適切な分配ルールを構築してほしい。

<新しいコンソーシアムが最初の1年で実行すべき最もインパクトのあるアクションは?>

・まとまった資金(キャッシュ)支援:地域で挑戦しようとするスタートアップにとって、移転費用や事業拡大のためのまとまった資金は非常に重要。支援メニューが多岐にわたり、一つ一つが薄まってしまうのではなく、インパクトのある資金支援があると心強い。

・失敗談・事例を共有する場の創設:起業家と支援者が混ざり合い、成功体験だけでなく失敗談からも学び合える勉強会やコミュニティが必要。

・多様な人材との出会いの機会:東京のように、多様なバックグラウンドを持つ専門家や投資家とカジュアルに出会える場が地域にも必要。現状ではアプローチできる層が限られてしまう。

・本音で話せる関係性の構築:課題や悩みを「さらけ出して話せる」、深く相談・共有できる信頼関係に基づいた伴走支援が求められている。

6.閉会挨拶

東北経済連合会 事業支援部長 兼 東経連ビジネスセンター副センター長 佐藤健智氏:

閉会の挨拶として、本日のイベントが非常に有意義であったことへの謝意が述べられた。新たに発足した本コンソーシアムが、仙台・東北地域におけるスタートアップの育成と技術加速に貢献することへの期待が示された。行政、大学、経済界、そして金融機関など、多様な組織の連携が東北の経済を活性化させる鍵であると強調された。

最後に、本日参加した支援者や起業家に対して、今回の出会いをきっかけに、引き続き地域の機運を高めるイノベーションの実現に貢献してほしいと呼びかけた。本イベントの開催への尽力に対する関係者への感謝の言葉で締めくくられ、今後もエコシステム発展に向けて皆様の支援と協力を願うとして、挨拶を終えた。

<交流会の様子>