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【イベントレポート】仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアム 令和7年度南東北勉強会
投稿日:2026年03月18日
目次
1. イベント概要
2. パネルディスカッション
3. ワークショップ
4. 交流会
1.イベント概要
日時:令和7年2月26日(木)15時30分~19時
会場:キョウワグループ・テルサホール 中会議室あずま(福島県福島市上町4−25)
本勉強会は、仙台・東北スタートアップ・エコシステムコンソーシアムの活動の一環として開催された。南東北(宮城県、山形県、福島県)を中心に事業を展開する起業家や、行政・金融機関などの支援者が一堂に会し、地域特有の強みやチャンス、そして直面している共通課題についての意見交換が行われた。後半のワークショップでは、参加者がチームに分かれ、パネルディスカッションで抽出された課題を解決するための具体的なアクションプランについて活発な議論が行われた。

2.パネルディスカッション
パネリスト:
田村 壽英 氏(株式会社ZAICO 代表取締役)
井上 誠也 氏(NanoFrontier株式会社 代表取締役)
須知 高匡 氏(Zip Infrastructure株式会社 代表取締役CEO)
モデレーター:
福留 秀基 氏(スパークル株式会社 代表取締役)
<南東北で事業を展開する理由>
・田村氏(山形県):スモールスタートと独自のストーリー性
創業時は資金面のリソースが限られていたため、山形県米沢市の実家の敷地を活用して登記し、事業をスタート。現在はフルリモート体制を敷き、山形県を本拠地としながらクラウド在庫管理ソフト(SaaS)の全国展開を行っている。ソフトウェアというコモディティ化しやすい領域において、地方発という背景が独自のストーリーを生み、東京のサテライトオフィスで起業するよりも他社との明確な差別化に繋がっている。

・井上氏(宮城県):大学の研究シーズの社会実装
20年という長期スパンで取り組むべき事業を模索する中、投資家の紹介で東北大学の優れた研究シーズと出会い、仙台へ拠点を移す。高度な学術的知見をビジネスへと翻訳し、エネルギー・ディープテック領域での社会実装に挑戦している。

・須知氏(福島県):実証実験用地の確保と自治体の受容性
次世代モビリティシステムの開発には、基礎工事を伴う広大な試験線用地が不可欠であった。全国の自治体に打診する中、前例のない挑戦を受容し、土地の貸し出しに応じた福島県南相馬市を事業拠点として選定した。

<南東北スタートアップの期待とチャンス>
南東北エリアにおける期待・チャンスは、行政のファーストカスタマー機能および充実したアカデミア・行政の支援体制に集約された。
・ファーストカスタマーとしての行政の力:創業期や技術が未成熟な段階において、自治体が最初の顧客となることが持つレバレッジの大きさが強調された。田村氏は、とある自治体が採用したことで絶大な信用力が生まれ、その後の展開が大きく加速した事例を紹介。須知氏も、とある自治体が調査費として少額でも予算をつけて発注したことが強力な信用に繋がり、ピッチコンテストの賞金以上に企業の命運を分ける支援となったと述べた。
・アカデミアとの強力な連携と恩恵:井上氏より、国際卓越研究大学である東北大学には世界中から資金と知が集積しており、スタートアップ創出への意識も極めて高いと評価された。特に同大学の共創研究所制度を活用することで、20代の若手社員にも特任准教授といったアカデミアのポジションを付与でき、優秀な研究者がキャリアを犠牲にすることなくスタートアップに参画しやすいエコシステムが機能していることが紹介された。
<南東北スタートアップの壁と障壁>
事業成長において直面している課題として、地方特有のマインドセットや、支援エコシステム・自治体連携における構造的な壁が挙げられた。
・現状維持の檻と交流拠点の不在:田村氏は、地方都市の居心地の良さがのんびりやろうという現状維持を招き、視座を高める機会を奪う懸念を指摘。外部の多様な起業家からの刺激の注入が不可欠であるとした。
・名ばかりスタートアップへの警鐘:井上氏より、急成長や株主へのリターンを重視しないケースもみられるのではないかとの指摘がなされた。行政や大学側が創出「数」を目標としている現状では、企業の成長ステージや目的に応じた支援のメリハリがつきにくく、結果としてリソースが分散してしまう懸念がある。事業の構造に応じた支援の在り方を再整理する必要があると提言された。
・起業家コミュニティの重要性:モデレーターより、東北の起業家コミュニティが十分に形成されていないことが触れられたが、須知氏より、福島の起業家の集いや、全国の同年代起業家コミュニティの存在が紹介され、横のつながりの重要性について認識する機会となった。
3.ワークショップ
テーマ:「パネルディスカッションで出た期待をどう実現し、課題をどう解決できるか」
行政担当者、金融機関、起業家が混在する少人数のグループに分かれ、パネルディスカッションの内容を踏まえた意見交換が行われた。各チームで着目した課題に対する具体的な解決策とKPI/KGIが議論された。
〇発表例
事例①
・着目した課題:地元市場の限界と、外需獲得の必要性
ターゲットとなる大企業が地域に不在であること、また、内気な県民性や成功事例の不足を構造的な課題として抽出。
・解決策・希望:初期段階からの海外市場へのアプローチや、海外人材・外国籍人材の積極的な雇用。また、物理的な障壁として、移動時のWi-Fi環境の脆弱性が機会損失を招いているとし、インフラ改善の必要性も提起された。
・設定KPI/KGI:従来の企業価値向上だけでなく、「県外・海外への進出数」「海外との商談数やイベント参加者数の増加率」など、外需獲得に向けた直接的な行動を評価指標に据えるべきと結論づけた。
事例②
・着目した課題:名ばかりスタートアップの存在と行政の目利き不足
支援機関側のスタートアップに対する知見不足や創出数への焦りから、事業成長を志向しない企業へリソースが分散している現状を課題視。
・解決策・希望:行政や支援機関が、本気で事業化や課題解決を目指す企業のみを的確に見極め、要件を厳格化した実証事業や補助金制度を構築すること。支援側にも本気度が求められる。
・設定KPI/KGI:支援成果を、市場からの資金調達額、売上の成長率(%)、従業員給与の増加率といったハードルレートを設定し、達成状況に応じて支援を集中させる仕組みの導入を提言した。
事例③
・着目した課題:起業家コミュニティの質と方向性
起業家同士の繋がりが不足している一方、目的が不明確なオープンイベントや、熱量の合わない者同士のコミュニティはゾンビ企業の温床になりかねない点を危惧。
・解決策・希望:業種や成長への熱量が完全に一致する起業家のみで構成される「クローズドなコミュニティ」の形成。関係値を急速に深める施策として、行政の遊休施設を活用した、数日間にわたる寝食を共にする「合宿形式」のプログラム導入が提案された。
・設定KPI/KGI:コミュニティの価値は参加人数や開催回数では測れないとし、コミュニティ内部から生まれた「協業実績数」や「資金調達の成立件数」など、具体的な経済的果実のみを指標とすべきであると提言された。



4.交流会
同会場の別スペースにて交流会が実施された。行政の担当者、金融機関、起業家といった異なる立場の参加者がリラックスした雰囲気の中で名刺交換を行い、本編の限られた時間では語り尽くせなかった個別の課題や今後の連携の可能性についてフランクな意見交換を実施した。ワークショップで提言された質の高いコミュニティの重要性を体現するように、東北における次なるアクションやビジネス創出に向けた実務的なネットワーク強化が図られる場となった。

